出会い

　エルフ王に導かれてこの王の間に入ってきた
ものは、１０名の若いエルフだった。
　どの若者も一応に緊張と決意をその顔に浮かべ
並んでいる。
　さすがにホークの見知ったものはいないが、
彼らの装備の幾つかは、エルフ族に伝わるもので
至宝と呼ばれるものばかりだった。
　ホークは、これらの装備からおおよそ彼らの出自を
知ることができた。
　どれも各氏族で至宝として預かっているものだ。
　これだけで若者達が個人よりも各氏族の代表として
来ているのが分かった。
　若者たちは、年代も近いこと、また何分エルフ社会
という狭い社会ということもあり、お互いを見知っていた。
そして既に役割のようなものが出来ており、自然とリーダー
が生まれているようだ。
　ホークとしては、次代のエルフ王候補を審査するという
役割を与えられた以上、彼ら一人一人を良く知る必要がある
だろう。
　まずエステリアは、先ほどから会話からなにからみなを引っ張って
いるリーダー格の女性である。その性格は、姉御肌であり、一つ
間違えれば、粗野にも見えるほどである。
粗野に見える原因として下半身にほとんど防護のない
変わったスケイルメールを着ているが、その動きから
かなりの手練のようにみえる。
　シリアスは、チェインメールの上にダークグリーンのローブを
はおり、一見すると司祭のようにも見える長髪の若者である。
物腰も落ち着いて、他を安心させる不思議な雰囲気をもっている。
彼もこの若い一行のリーダー格である。
　セロウェンは、肩まで伸びたブラウンの髪、輝く緑の瞳を備えた
非常に美しい乙女である。はにかんだ笑みをいつも浮かべており
ほっそりとした緑と桃色の衣装が非常に良く似合っている。
この一行の人気者といえるだろう。
　ニスタリーナは、セロウェンに負けないほど美しい娘である。
ポニーテールにまとめた美しいブロンドの髪が非常に印象的
であるが、彼女は、セロウェンと違い非常なまでに無口であり、
他から一歩離れた態度をとっている。
それが彼女をとっつきにくくしているようだ。
　リリオニンもセロウェン、ニスタリーナに負けないほどの
美貌をもっているが、彼女には、それをわずかに損なう
ものがあった。それは、刺すような灰色の瞳である。
初対面で怒っているのかと誰にでも思わせるような鋭い
目が彼女をただの美しい娘には、見せず、激しい何かを
持っているように何者かに見せている。
　ラファロットは、髪を腰で結ぶのを忘れて長いブラウンの髪
をふんわりと目までたらして、少しだらしのない感じがする男だ。
星を散らした深い青のチェニック、灰色の皮手袋、黒いブーツ
を身に付けているのも洒落もので、武人であるホークとは、
相容れないようにも思える。一方で、底知れない何かを
隠し持っているようでもある。
　スロームとトヴァーは、双子である。彼らは、二人とも
プレートメイルを身にまとい、外見上は、鏡に映したように
そっくりである。性格も二人とも武人らしく、さっぱりとした
男らしいものを感じる。腕前のほうも信頼してよいように
思える。二人の若干の違いといえば、スロームのほうが
会話がたくみで、より社交的なところである。
トヴァーは、その点でより無骨な男のようだ。
　シャグリーンは、黄金の髪と碧眼を持つ非常に美しい男である。
態度、声が男らしく、力強いため女性に間違えることは、ないが
その美しさは、女性と比べても勝るものである。
また、愛想もよく上品な物腰のため、当然、みなに人気がある
ようだがエステリアだけは、彼を気に入らないようだ。
　そしてホークも彼には、なにか鋭いナイフのようなものを感じた。

　最後にある意味最も印象的だったのがパープルプリンである。
この一行は、たとえるならば鋭利な刃物のような、非常に切れる
印象があるが、彼女だけは、ぼんやりとしており、鋭さとは、
縁遠い。それは、外見、言動、物腰の全てがである。
この娘は、周りから、からかいと叱咤の対象になっているようで
エステリアからは、つどつど叱責をされている。
　そのぼんやりとした態度、彼女の愚かしさからくるものなのか、
それとも大人物の片鱗なのか、判断には、永い時がかかりそうである。